日本語の「スキル」を育てるツール
株式会社角川書店 出版事業部・制作部 福島慎太郎さん

「角川類語新辞典」は、日本語をより豊かに表現できるATOK専門用語変換辞書シリーズのひとつとして定評があります。今回は電子出版担当の福島さんにお話をうかがいました。使うほどに味が出る、使う人によってそれぞれ違う活用法がある、そんな懐の深いツールのようです。

まずはじめに基本的なことをうかがいますが、類語辞典と国語辞典は、どんな違いがあるのでしょうか。

類語というのは、「形」は違うけれど「意味」は似ている言葉のことで、まったく同じ意味の場合もありますし、わずかながらニュアンスが違ってくる場合もあります。類語辞典は、ひとつのテーマに沿った言葉を集めることで、微妙な意味の違いを見比べられる仕組みになっていますから、より自分の感覚に近い言葉を「選ぶ」手助けとして、国語辞典は50音順に並んでいますから、ひとつひとつの言葉の意味を「調べる」ものとして、それぞれ使い分けられると思います。

角川類語新辞典は「選ぶ」、一般的な国語辞典は「調べる」

なるほど。類語辞典は言葉を選ぶためのツールなんですね。紙媒体で使う場合と、デジタルデータとしてパソコン上で使う場合とでは、使い方が変わってきますか。

パソコンを使って何かを検索するときは、ピンポイント検索で目的のものがズバリ出てくる。紙媒体の場合は、ぱらぱらとめくっていく過程で他の検索結果も目に入ってくる。デジタルと紙では、それぞれに特性があります。しかしデジタルデータとしての類語辞典の検索結果は、候補が多数出てきますから、どちらかというと紙に近いものがあるんですね。デジタルなのに選択の幅が広い。これは今までのデジタル辞書データにはない、新しい点です。

選択の幅が広い反面、自分のなかでの基準があいまいで、言葉が選べないときがあるんですが……。

そこで選ぶ助けとなるように、言葉の意味である語釈や、用例に力を入れています。とくに類語特有の微妙なニュアンスを伝えるには、こういう場面で使いますよ、という用例がいちばんの近道ですからね。また、さまざまな用例が画面に表示されることで、無意識のうちにいろいろな表現方法がインプットされて、自分の語彙が洗練されていくのではないでしょうか。

使えば使うほど語彙が増えていくのは嬉しいですね。さらにオススメしたい使い方はありますか?

メールやビジネス文書を書くときに、何かを強調して伝えたい場合があるとします。そのときに、あえて反対の意味の言葉を使って逆説的に攻めるというテクニックにも使えますね。たとえば「創造」というテーマを伝えたいときに、この反対語である「模倣」という言葉を使う、さら に「模倣」の類語を検索してみる、というようにです。こうした一歩先の探求心は、文書だけではなく、人との会話やコミュニケーションに生きてくるんじゃないかとも思うんです。


パソコン社会の弊害のひとつとして、コミュニケーションの欠如がいわれているなかでは、斬新な使い方ですね。

こうした使い方ができるのは、紙媒体の辞書ではなく、ATOKと連携した類語辞典ならではだと思います。たとえば、同じ「楽しい」という言葉でも、強い弱い、明るい暗い、といった立体的なグラデーションのなかから、いちばん自分の感覚にしっくりくるものを選ぶことができますからね。受け身ではなく、自分から調べよう、語彙を増やそうという意識が出てくると思います。

使い続けると、日本語に対する意識が変わってくるかもしれませんね。

そうです。類語辞典は「ひらめきのツール」ですから、使ううちに自分のボキャブラリーが増えていくと、いずれ自分が見つけた類語を蓄積したいと思うようになるかもしれません。自分仕様の類語ユーザー辞書、なんて試みもおもしろそうですね。

ひとりひとりで違った使い方ができ、スキルアップにつながるツールだとわかりました。本日はありがとうございました。

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