みぢかな日本語

●Vol.3
「今年こそはヒットを出す!ひと言が1億につながる!
─ネーミングの日本語─」Part 2

◆思わず人に言いたくなるシャレ気も大事

ATOK.com: この春、新商品が発売されると聞きました。どのような飲料なんでしょうか?
大西: アディダス ジャパンと共同開発した本格スポーツドリンクです。商品名は「903(キュウマルサン)」。アミノサプリなどの機能性飲料がはやっていますが、日常的に飲むものが多い。そこで今、空白ゾーンとなっているアスリートが飲む機能性を追求しました。
ATOK.com: これも、お客さんの不満から始まったものですか? 903
大西: そうです。スポーツドリンクに求められている機能は、水分補給とエネルギー補給と疲れをやわらげる、という3つなのですが、水分補給もエネルギー補給も既にあります。でも3つ目がない。お茶は味からでしたが、スポーツドリンクは機能からでした。トップアスリート達も愛用しているクエン酸がたくさん入ったスポーツドリンクをつくろう、というのが始まりです。
ATOK.com: なるほど。クエン酸で903なんですね…。
大西: まあ、シャレです(笑)。これも、クエン酸が主だからといって、クエン酸を全面に押し出してしまうと、イメージが広がらない。そこで、スポーツドリンクだから「機能的」なイメージにしようと考えました。そこで出てきたのが数字です。リーバイス505のように型番の響きのようで洗練されているし、その一方で東急のことを109と表記するようなシャレ気もあるし。いろいろな言葉の候補が並ぶ中で、数字だから一際目立っていて、ほとんど即決でした。
ATOK.com: そのわりには、パッケージには「903」だけで「クエン酸」とふりがなをふっていないんですね。
大西: そこまでやると、面白さがなくなってしまいます。やはりメーカーとしては言いふらしたいところですが、そこはグッと我慢です。この場合も「クエン酸」と書いてしまっては、そこからイメージの広がりがなくなってしまう。ああ、クエン酸なんだ。以上。というようにね。
ATOK.com: 気づく人には気づいてもらいたいと。
大西: そう、そういう人こそがウィットに富んでいるとか、情報通だね、と言われるようになれば。その微妙なさじ加減に気を使いました。気づいた人が、いろいろなところで903はクエン酸のことだよと言いふらしてくれたり、ひいてはブランドのユーモアとして捉えてもらえると嬉しいですね。
ATOK.com: 飲み物としては、デザインもすごくシンプルですね。
大西: スポーツに特化しているので、機能美を追求しました。本格ドリンクなので、ごちゃごちゃとデコラティブにすると、かえって効き目がないように受け取られてしまうと思いました。
ATOK.com: 始めのお話にもありましたが、生茶も903も中身のことを表すネーミングですね。
大西: やはり当社のネーミングの根本は、そこにあります。短く、わかりやすく、ですね。あと903のように人に言いたくなるようなネーミングも狙ってます。
ATOK.com: 商品開発の過程では、やはりネーミングを考えるときが一番楽しいですか?
大西: そうですね、苦しいし楽しいです。やはり名前は重要なことですから。試行錯誤の上に味を作って、デザインを考えて、そこで名前で失敗したら、もうなんにもなりません。ですから、社内的にも目が厳しいです(笑)。ちゃんと考えろよ! というプレッシャーが…日々この肩に重く…。
ATOK.com: ううっ、日々精進ですね…。
大西: まさしく。いつも必死に考えていますが、ひとつのことを考えるのではなくて、いろいろなジャンルを組み合わせることが大切です。ゼロから生まれることは、ほとんどないと思いますよ。「生」や「辛口」は、普段から使われている言葉ですが、「生」と「茶」が出会うことによって化学変化して、違うものが生まれる、その瞬間を探す仕事です。そのために、あらゆることに対してポジティブになるようにしています。
ATOK.com: がんばってください。ありがとうございました。

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update:2004.02.20